水戸市長 高橋 靖 殿

2016年2月2日

新・水戸市民会館計画に関する公開質問状

新・水戸市民会館計画を白紙に戻し、市民の声を反映させる会
代表 田中 重博(茨城大学名誉教授、 地方自治論)
同 丸山 幸司(弁護士、 水戸翔合同法律事務所)
同 菅野 法子(水戸母親大会連絡会 事務局長)
事務局長 岩清水 理(明るい水戸市をつくる会 代表委員)

私たちは2016年1月14日に「新・水戸市民会館計画の白紙撤回を求める要望書」を高橋靖水戸市長に提出しましたが、1月20日付の「回答」は、まるで木で鼻を括ったような道理のない不誠実なものでした。

そのため私たちは、必要な事項を追加し公開質問状として、あらためて高橋水戸市長に提出するとともに、広く水戸市民の皆様にこの問題を考える際の参考にしていただくために、その内容を公開するものです。

1. 計画は水戸市長の独断で巨大なものに変ったことは明白ではないですか?

大震災により破損した旧水戸市民会館は、多くの市民に親しまれた会館であり、その速やかな再建が必要です。そのため、立地場所、規模、施設の備えるべき要件など、市民や利用団体や有識者が計画策定の段階から参加し、民主的に練り上げるべきです。

しかし、今回の計画決定は、市長の独断で決められました。すなわち、2014年3月に決定された「水戸市第6次総合計画」(「6水総」)で、新・市民会館の建設計画は、旧施設と同程度の規模(大ホールは1,000人収容)とし、その建設費46億円に土地代22億円を加えた68億円が計上されたのです。

ところが、高橋市長はこの「6水総」が始まる直前の2013年12月市議会の代表質問に対する答弁で突然、新市民会館は2,000人の大ホールと施設全体で3,000人規模のコンベンション(集会、大会、学会、国際会議、展示会、見本市などのこと)機能を持ち、泉町1丁目北地区に建設し、民間の再開発準備組合と協議しながら進めていくと表明しました。これは、議員や市民に事前に全く意見を聞かず、市長の一存で決めたものであり、市議会で審議し決定した「6水総」にも違反し、地方自治と民主主義を逸脱する行為であるといわざるを得ません。

これによって、専用駐車場を含む事業費は約320億円という、当初計画の実に4倍以上もの膨大な額(全体で3,700人収容、面積は旧市民会館の約3倍の巨大なもの)に膨張しました。他の候補地の検討についても不明です。このような市民を無視した計画をいったん白紙に戻し、市民の意見を十分聞き、縮小して適正な計画に見直すように再度強く求めるものです。市長の誠意ある見解をお聞かせください。

2. 巨額の市民の税金の無駄遣い以外の何物でもないのではありませんか?

新・水戸市民会館の事業費320億円(駐車場を含む)は、水戸市の1年間の予算の約3分の一に匹敵し、27万人市民一人当たりで12万円の負担(4人家族では48万円)にあたります。国の補助は約2割の66億円に過ぎず、250億円以上が水戸市の負担となり、その大部分が市債(借金)で、子供の代まで多額の負担をすることになります。その必要性の根拠の説明もなしに膨れ上がったことからも、税金の浪費・無駄遣い以外の何物でもないと考えますが、市長のお考えをお聞かせください。また、将来世代の市民の負担の増大はないのかどうか、伺います。

また、40億円もの税金を投入した大工町1丁目の再開発事業について、いまだにビルのテナントが埋まっていないことを含め、どのように総括、評価されますか?

さらに、高橋市長が進める四大プロジェクト(市役所206億円、ごみ処理施設400億円、東町運動公園103億円、市民会館320億円、計1,000億円以上)は、水戸市の1年間の一般会計予算に相当する巨大な金額です。この四大プロジェクトによる借金の増加によって水戸市の市債残高は2019年度には2,550億円で過去最高となり、市民一人あたりで92万円となり、子供の代まで借金の返済を背負わされることになります。全体として見直し、縮減すべきであると考えます。

とりわけ、東町運動公園のメインアリーナは「スポーツコンベンションの拠点」「客席約3,700席(椅子も追加すると5,000名収容)」とされ、目的や規模が新・水戸市民会館計画と重なる面があります。距離も近く、重複投資の無駄になるのではないか、明確な説明を求めます。

3. 「利権政治」の産物ではありませんか?

京成百貨店を建設した泉町1丁目南地区の市街地再開発事業でも最大の地権者は「伊勢甚」であり、約68億円の税金が投入されました。今回の計画も同様の再開発事業(103億円を計上)により、旧京成百貨店の所有者であり最大の地権者である「伊勢甚」に「補償金」という形で約30億円(ビルの解体費を含めると43億円)もの巨額の税金を供与するものであり、一部特定企業と行政との癒着、「利権政治」の産物という批判を免れません。この疑惑について、市民への明快な説明を求めます。

また、志村病院の移転先の土地代金の先行支出について、事実経過、金額、何時、どのような予算から、どのような根拠に基づいて支出したのか、お答えください。

4. 肝心の需要調査はされましたか? 収支見込みは?

この巨大市民会館建設後に、果たして3,000人規模のコンベンションは、年何回見込めるのか、肝心の需要調査はされたのか、ホール使用料は従来と比べていくらになり、稼働率の見込みはどうか、修繕費や維持管理費の見込みなどを含む収支計画についてお答えください。これが明確に、根拠ある数値で示されない限り、いくら「コンベンションの拠点をつくり、交流人口を増やし、中心部を活性化する」などといっても、この計画は「絵空事」となり、税金の無駄遣いに加え、赤字経営に苦しみ、「金食い虫」の厄介な「巨大箱もの」をつくる無謀な計画といわなければなりません。

県内最大規模の2,000人収容の大ホールは、本当に必要なのか。水戸市内には、1,514席の大ホール(稼働率は67%、1日平均1031人の利用、2012年度)を持つ県民文化センターがあり、競合するのは必至と考えられます(旧水戸市民会館の1,004席の大ホールの過去平均稼働率は61%、1日平均600人の利用)。また、計画区域に隣接して水戸芸術館もあります。

水戸市が他県の施設に比べ、コンベンションの誘致に有利な特別の条件を有しているとは考えられません。例えば、医学系コンベンションを開催するうえで有利な有力大学の有力医学部が存在しているわけでもありません。年に数えるほどのコンベンションしか見込めず、稼働率も低く、収支の赤字を背負い、維持運営に苦しむのではないでしょうか。旧水戸市民会館は、年間6,600万円で運営していました。新しい市民会館の維持管理費はその約5倍の3億円以上になるといわれています。これだけでも市の財政にとって大変な負担増となります。また、県民文化センターと新・水戸市民会館とが競合し、客の奪い合いになっては、意味がありません。

つくばには1,258席の大ホールを有する国際会議場があり、筑波大学医学部の存在や東京からの交通の便など一定の有利な条件を備えていますが、その大ホールも稼働率は51%(2012年度)にとどまっています。以上述べた諸施設とのすみわけを慎重かつ冷静に検討し、無駄な投資を避け、ホールや会議室の使用料(明示されていない)も安くし、市民が気軽に利用できる市民会館をつくらなければなりません。

5. 駐車場の不備から交通渋滞が起こるのではありませんか?

この計画では、専用駐車場は300台分を隣接地域に整備するとされています。予定区画の東側道路も西側道路も、50号国道、118号国道からの出入り道路は一方通行で、多数の車両が一時に集中すると交通渋滞は必至です。

3,000人のコンベンションとなれば、大型バスを含む1,000台内外の車両の駐車が必要になると思われます。利用者は、泉町地下駐車場やコインパーキングを探して混乱が予想され、渋滞が広がることは必至です。市の「回答」では、必要な駐車場台数は約700台と想定し、約400台を既存の近隣駐車場の空車分を見込んでいるとのことですが、必要駐車場の想定が少なくないか、近隣駐車場の空車に依存しすぎていないか、疑問は尽きません。ちなみに1,514席の大ホールを持つ県民文化センターは臨時を含め約630台(普通車410台、大型バス17台、臨時200台)の駐車場を備えています。自動車の排気ガスと日当たりが悪くなるとの理由により、駐車場建設候補地で住民の間に反対の動きがあることも無視できません。

6. 市民参加によって会館をつくり、街の活性化を図るべきではありませんか?

大規模なコンベンションの誘致のために市民会館をつくるという発想は、本来の市民会館の目的、役割からすれば、本末転倒といわねばなりません。市民の使い勝手のいい、利用しやすい、身の丈に合った、市民による、市民のための市民会館をつくらなければならないと考えます。数少ない外部からのコンベンションやイベントの呼び込みは、一過性のものであり、街の活性化や賑わいをもたらす保障はありません。

近年、コンベンション施設をつくる自治体が増加し、「コンベンションラッシュ」という乱立状態となり、とくに2,000席規模の大ホールを有する地方都市は多数にのぼり、過当競争の観を呈し、実際に誘致に成功しているケースは稀で、国際的にも有名な大都市や一部の有力都市にコンベンションが集中する結果となっています。施設が駅から1キロも離れると「遠い」と敬遠され、殆どが赤字で、ランニングコストを賄えない状況です。「2,000席を満席にするイベントは稀」という指摘もあります。

専門家も「施設だけつくれば、あとは指定管理者にでも任せておけば何とかなるといった発想、また期待値だけを過大に見積もり、需要を冷静に判断しない安易な発想が一番危ない」と警鐘を鳴らしています。まさに水戸市への警告といってもいいのではないでしょうか。市長はこの警告にどう答えますか? 各地の地方都市の苦い経験と厳しい現実から冷静に学び、失敗の愚を繰り返すべきではありません。

水戸市と似た人口規模(25万人)の長崎県佐世保市の「アルカス佐世保」の事例について言えば、2001年開設の2、000席の大規模ホール(市ではなく、県が設置者)は、これをコンベンション開催の起爆剤としてフル活用する目論見が開設後数年にして崩れ、コンベンションの誘致よりも地域文化の創造、育成、鑑賞、交流、普及などを重点とするようになったこと、一方、1,500席のホールを持つ築53年の市民会館は使用料も安く、市民に根強い人気があるといった現状は、新・水戸市民会館の将来を暗示しているように思われます。九州で優良とみなされる「アルカス佐世保」の施設全体の年間利用者数約44万人(稼働率73.7%、そのうち大ホール約14万人、67.7%:2014年度)という実績は、高橋水戸市長の年間60万人の来館者という目標がいかに困難で夢物語に近いものであるかということをも、示しているのではないでしょうか?

リゾート開発とかテーマパークとか、呼び込み型・誘致型の開発はこれまで何度も失敗を繰り返してきました。水戸市も将来は人口減少時代を迎え、深刻な財政難と急速な高齢化に直面することが予測されるもとで、確かな根拠のない呼び込みの集客に基づいた巨大な箱ものは慎むべきではないでしょうか。

住民が計画策定段階から参加し、その意見を十分に聴いてつくられ、住民が気楽にその施設を利用できてこそ、街の活性化や賑わいに寄与することができるはずです。今回の計画決定のプロセスは、この実質的な市民参加がないがしろにされています。今からでも遅くありません。ただちに当局は、新・市民会館建設に向けて市民、専門家、有識者等が参加する機関を設置することを求めます。

7. 1万人規模の市民アンケート調査をすべきだと考えますが、いかがですか?

市長の「回答」では、「各種団体へのヒアリング、市民アンケート、市民ワークショップ、意見公募手続により意見の聴取に努める」と記しています。しかし、水戸市が昨年9~10月に実施した市民アンケートの回答は、わずか331人(有権者の0.15%)でした。これではアンケートとは言えず、市民の意見を聴いたとは到底言えません。また、その設問も、泉町1丁目の立地場所と2,000人大ホールと3,700人収容規模など現在の計画を前提とし、そのうえでどのような催し物を望むかなどを聞くもので、事後承諾的な性格が強く、市長案の押し付けにほかなりません。意見公募も、2014年12月から翌2015年1月までの1か月で、意見数も計14人、55件にとどまり、27万人有権者からすればわずかなものにすぎません。

高橋市長は「市民参加」や「市民と行政との協働」をよく口にされますが、この計画については実質的な市民参加がまだほとんどなされていません。このような現状にあっても、計画を強行されるおつもりでしょうか? お答え願います。

私たちは、市民会館はなるべく速やかにつくるべきだと考えますが、同時に拙速を避けるためにも、新・市民会館計画について、その場所、規模、事業費、施設の要件などを含め市民の意見や要望を公正に聴取する1万人規模の市民アンケートを実施すべきであると考えますが、いかがですか?

8. 市民を苦しめる市政になっていませんか?

市民生活が苦しくなっている中、市民会館のために320億円もの莫大な支出をすることは、とても市民の理解と同意を得られるものではありません。

新・市民会館建設には莫大な税金を投入しながら、市民の福祉や暮らしを守る予算を削減し、公共料金が値上げされる。市立図書館5館を人件費削減のために民間業者に委託(指定管理者制度)し、私立幼稚園児に対する子育て補助金をカットし、下水道料金を値上げするなど、市民を苦しめる市政になってはいないでしょうか? 旧来の規模でのコンパクトな市民会館ならば、68億円程度で済み、250億円もの莫大な財源を節約できます。これだけの財源があれば、公共料金の値上げを抑え、子育てや介護、教育などの充実のために実に様々な施策が実施できます。市民の暮らしと福祉を守るという自治体の原点に立ち返り、計画の見直しをすべきではないでしょうか?

9. 水戸芸術館は市民開放すべきだと考えますが、いかがですか?

計画では、新・市民会館の目と鼻の先に水戸芸術館がありますが、当館は、貸館はせず、市民に開放されない形で、ほんの一部の音楽家や舞台関係者しか使えない状態です。その枠から外れた音楽家や舞台芸術家(演劇、舞踊など)はどこで自主公演をしたらよいのか、という切実な声もあります。水戸芸術館条例の改廃を前提に、施設使用料をきちんと定め、広く一般市民に開放すれば、全体として効率的な運用が可能であり、1,000席程度の新・市民会館で充分と考えますが、いかがですか。

10. 地元説明会や公聴会での反対意見を受け入れ、白紙撤回すべきでは?

地元説明会においても、2,000席の大ホールは大きすぎる、維持費はどうなる?
駐車場の問題等様々な問題点が指摘されました。地元には、地権者、借家人、借地人は50人おられ、再開発準備組合の加入者は18人で、計画に反対の地権者もおられます。

また、公聴会では7名の公述人全員が、多様な角度から計画を白紙に戻すこと、ないし反対の意見を述べました。これら地元説明会での問題点の指摘や、公聴会での市民の声を反映した公述人全員の計画への反対意見を真摯に考慮するならば、市当局は計画を白紙に戻すべきだと考えますが、いかがですか?

11. 代替案の一例。 計画をいったん白紙に戻し策定し直すことを求めます。

「人口減少時代」「少子高齢化時代」に見合った施設づくりの一例として、私たちは、旧市民会館と同規模のものを、旧県庁隣接地(県立図書館と中間の芝地または北側駐車場用地)に建設する(その費用は「6水総」計画の68億円前後で可能)との具体案を提案しています。この検討を求めます。

新・水戸市民会館問題は、水戸市民一人ひとりにとっての重大問題であり、拙速に走らず、計画をいったん白紙に戻し、市民の声を十分反映した、コンパクトな財政負担の少ない計画に策定し直すことを重ねて要望します。
これは市長に対する質問状ですが、水戸市議会議員の皆様にも、市民の代表として、行政のチェック機能をきちんと果たし、税金の無駄遣いを厳正にチェックするとともに、市民が使いやすい身の丈に合った市民会館をつくるために御尽力いただくことを強く期待するものです。

最近話題となった新国立競技場計画も、あまりに巨額で巨大なことへの世論の批判が噴出し、安倍首相が白紙撤回を表明し、昨年12月総事業費が大幅に削減されて決定されました。高橋市長の勇気ある決断を期待します。もし、白紙撤回されない場合は、私たちは計画の賛否を問う住民投票条例の制定を求めて署名運動に入ります。

以上について、2月12日までに、文書で回答されるよう、要請します。

(連絡・回答先)
〒310-0903 水戸市堀町976-12 「市民の会」事務局
Tel/Fax 029-253-2845

以上

新・水戸市民会館計画に関する公開質問状(PDF)